「続・パンドラの箱」
「本当のことを教えて」
この言葉の意味は、「真実を知りたい」ってことではない。
わたしにとって都合の好いことだけ教えて、の意味である。
あのメールを見てから1年経った頃、わたしたちは大宮で会った。
ソニックシティ大宮に荷物を置き、食事に出かけた。
お気に入りの焼き鳥屋さんで食事を済ませ、外に出ると、
もう1軒行かないか、
彼はわたしを誘った。
珍しいことだった。
少し、気持ちに余裕ができたのかな?
それぐらいに考えていた。
彼が連れていったのは、小さなスナックだった。
お客さんはまだ誰もいなくて、ママが1人、カウンターにいた。
数年ぶりの来店だったらしい。
ママも驚いていた。
彼は今までのこと、
富山にいたこと、転勤で東京に行ったこと、
そして、今の仕事につくまでのことをはなしはじめた。
そして。。。
「そのときはもう、田舎に帰ろうかなと思ったんや、でも、ちょっとした問題が出来て」
心臓が早鐘を打つ、
まさにそんな感じだった。
足は震え、座っているのがやっとだった。
あのときのことだ。
あのメールの文字が浮かんだ。
「なにがあったの?」
頑張って平静を装ったつもりだった。
でも、声は震えていたと思う。
泣き出しそうな顔をしていたのだと思う。
しばらく間があった。
数分?
いや、数分だったのかもしれない。
そして、彼が言った
「仕事のことだよ」
ウソつき!
心の中で叫んだけど、どこかホッとしていた。
わたしのためを思ってなのか、どうなのかは分からない。
言いにくいこと、聞きにくいことにフタをしても好い結果になるとも思えない。
でも、何故か、納得できた。
少なくとも、彼は、わたしとの関係を壊したくないと思っている。
その想いだけは受け止めることができたから。
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