陽のあたらない場所には、 弱くて卑怯なわたしがいる。
陽のあたる場所もあれば、あたらない場所もある。
陽のあたる場所が熱ければ熱いほど、
あたらない場所は暗く冷たい。
わたしたちの心も同じである。
熱い想いがあればあるだけ、冷たく暗い想いもあるのだ。
そこにあるものは、感情とは全く正反対のモノ、
それは「理性」と呼ばれるものかもしれない。
人の持つ、最も御しがたいモノだ。
それは好くも悪くも、わたしたちの熱い「想い」に水を差す。
最初にそれを感じたのは、
一番の親友を失った時だった。
正確には、わたしから縁を断ち切った、のだと思う。
彼女とは、同じ年。
演劇のサークルで知り合った。
育った場所も学校も違っていたけど、
何でも話しあえる仲だった。
河原に座り込んで、いろいろなことを一晩中語り合った。
でも、この恋愛について話したとき、
彼女は本当に怒った。
なんでそこまで執着するのか分からない!
そう言った。
別れられないのは、甘さであり、弱さだと言った。
違う!強さだ。
そう言い返したかった。
でも、それでも反論されたら、多分、わたしは言い返せなかっただろう。
半分当たっていたからだ。
彼だけを求める強さはあっても、
彼を失っても生きていける強さは私にはなかったのだから。
わたしの中に、冷たい風が吹いた。
彼女とはもう分かり合えない、
分かってもらおうとも思わない。
そう思ってしまったのである。
親友だったけど、
今までいろいろあったけど、
わたしは、こうも簡単に結論を出してしまえるのだ。
その冷たさが、確かにわたしの中にはある。
引き下がるのではない。
あえて、引く。
これ以上、攻撃されないように。
刃の切っ先を失わせる。
陽のあたらない場所には、
弱くて卑怯なわたしがいる。