今、大切に思う時間
数年前から、雪の季節に一度
母と温泉旅館に泊まることにしている。
豪華な旅館ではないけど、
暖かい場所での上げ膳据え膳、
日常の雑多から離れて、
ただ、お互い静かな時間を過ごす、
ほんのささやかな贅沢を愉しむ。
そして、それは今だから大切に思える時間だ。
一緒に暮らしていても、
親娘であっても、
それぞれの想いがあり、
それぞれの生活がある。
そして、それぞれの想いもある。
叶えてあげられない母の願いもあるし、
なかなか理解してもらえないこともある。
でも、お互い、そのことについては何も話さない。
母は何も言わずに自分の生き方を見せてきた。
堅実に、確実に、自分自身を生きてきた。
わたしも今、ようやく自分自身を生き始めた。
生涯をかけて何をしたいのか、
ようやくカタチになりはじめた。
だから、わたしは今、どんな時間も大切に思える。
こうして、母と二人、静かに過ごす時間、
ただ一緒にいるだけの時間だけど、
きっと、わたしたちにとってはかけがえのない時間だと思う。