和倉温泉にて
能登半島にある、日本海でも指折りの温泉街、
和倉温泉に、数年ぶりに遊びにきています。
10年前、遠距離恋愛をしていたころは、
毎年のようにここにきていた。
漁師町で育った彼は、
海と魚が大好きだった
豪華な部屋や料理は要らない、
新鮮な魚があればそれでいい、
彼はよくそう言っていた。
だから、泊まる宿は、
美味しい海鮮焼きを出してくれるところと決めていた。
もう二度と、二人で来ることはない、
わたしたちの関係はすでに終わっている。
でも久しぶりに、
能登の海を見ていると、
今でも変わらない波の音に、
あの頃の感覚が蘇ってくる。
さすがに胸の痛みはないけれど、
波のように打ち寄せる切なさと懐かしさは、
どうすることもできない。
でも、新しい思い出を作れば、
どんな過去もただの記憶となっていく、
それが時の流れなのだろう。
そうやってわたしたちは生きているのだ。
これからも、新しい物語を紡いでいきたい。