母のみちのく桜の旅

先月、母が旅行のチラシを1枚見せた。
東北の桜の名所を巡るツアーがあるらしい。
それに申し込むつもりだと言っていた。

もちろん、反対する理由はない。

即決まった。

わたしは勤務があるのでついて行けない、

母は一人旅行でいいよと言った。

それも楽しいから、と。

それから、

なんやかんやと準備を始めた。

そして、当日がきた。

わたしは今クルマがないので、

母を駅まで送ることは出来ない。

結局、母の運転で姉の家にクルマをおき、

そこから近くのローカル線の駅まで一緒に歩いた。

富山駅からは新幹線だ。

妙高で降りて、そこからバスツアーになるらしい。

新幹線に乗るまで添乗員も誰もいないので、

何となく気になってはいた。

だからそのまま、わたしも新幹線のホームまで一緒に行った。

幸い、同じ行き先であろう旅行者が何人かいた。

平日なので他の客はほとんどいなかった。

新幹線がホームに入ってきたときも、

余裕で乗り込むことが出来た。

添乗員のような人が先に乗っていた。

始発の福井から同行しているらしい。

母も安心したように乗り込んだ。

新幹線の窓から、添乗員らしい人と母が話しているのが見えた。

そして列車はホームを出発した。

ようやく、わたしは安心した。

「気をつけていかれ!」

母が荷物を受け取るときに、

わたしにこう言った。

そっちの方でしょう。

そう思った。

でも、荷物を渡すときに触れた、

母のひんやりとした、少し乾いた手の感触、

今もまだ少し残っている。

3日後には、母が帰ってくる。

今度はホームまで迎えに行こう、

そう思った。