花火

梅雨が明ける頃、

街のあちこちで浴衣姿を見かける。

夏祭り、花火大会が、

あちこちで開催される。

昔よりも、

浴衣姿を多く見るようになったと思う。

今の時代なのだろう。

暑いのに、頑張ってるな、と、

変なところに関心するのも

「トシのせい」なのかもしれない。

並木通りを抜けたとき、

見覚えのある浴衣が目の前を過ぎった。

紺地に鮮やかな蝶模様。

一瞬にしてあの日が蘇る。

まさか「あの人」だろうか?

いや、そんなはずはない。

似たような柄は、たくさんあるだろう。

それに、あの人のはずはない、

なぜなら、あの人はもうこの世にはいないのだから、

でも、、、

その浴衣の後ろ姿は、

ずっと前の方を歩いていた。

いつのまにか、わたしも歩いていた。

普通の日だったら、

完全に気づかれて、怪しまれただろう。

でも、今日はみんなが同じ方向を向いて歩いていく。

人混みの中で見失わないように行くだけでいい。

でもわたしは、何を確かめたいのだろう。

それさえも分かっていなかったのかもしれない。

花火大会が開催される河川敷はたくさんの人で溢れていた。

その浴衣の後ろ姿も、

その中に溶け込んでいくようだった。

辺りが急に暗くなり始めた。

まもなく開始します、とアナウンスが響いた。

そして、

赤い火がまるで生き物ように上に昇っていく、

大きな音がして、一瞬周りを照らした、

その瞬間、

浴衣の人の横顔が見えた。

わたしは思わず息を飲んだ。

間違いない!あの人だ、生きていたんだ!

すぐに静寂と闇が戻ってくる。

そして再び、夜空に大きな花が開く。

しかし、そこには、その人の姿はもうなかった。

その浴衣の柄も、夜の闇で区別がつかなかった。

わたしはその場を後にした。

あれは、どういうことだろう?

わたしの記憶に残っていた「想い」が、

そう見せたのだろうか?

でも、花火は死者の霊を弔うものだという人もいる。

いずれにしても、

あの人に再び会うことはないのだ、

これだけは確かなようだ。

どこからきたのだろうか、

涼しい風が吹き抜けていった。