「おねがいだから、ほんとうのことを言って」

「書く」に勝る伝え方はない。

書かれた言葉だけが持つ力である。

「お願いだから、ほんとうのことを言って」

こどもの頃から思っていた。
ずっと言いたくても、口に出せない言葉だった。

だって、

「あなたのためを思って言ってるんだよ」

という言葉に

「本当にわたしのためなの?自分が言いたいだけなんじゃないの?」

と言ってしまうと、

「わたしのことが信じられないの?」

と、なるかもしれない。

また、なんてひねくれ者なのだろうと、

思われるかもしれない。

多分、どれも当っている。

わたし自身、人の口から出る言葉は信じていない。

わたしが唯一信じる言葉、

それは書かれた言葉である。

何故なら、それは自分と交わす約束

そして、誰かと交わす約束だからである。

子どものころ、

学校へ行きたくなくて、

ハンストをよく起こした。

当然、両親は認めてくれなかった。

「あなたのためを思って言っている」

よくそう言われた。

こんな思いをしてまで学校へ行くのが、

どうしてわたしのためになるのか!

そう反発した。

でも、ある日、机の上に母からの手紙が置いてあった。

内容はあまり覚えていない。

多分、いつも話していたようなことだったと思う。

でも、母がわたしを想ってくれていることだけは、

身に染みて感じた。

だから、ストライキを解いた。

「書く」に勝る伝え方はない。

書かれた言葉だけが持つ力である。

書かれた言葉のなかにのみ、
「ほんとうのこと」が見えてくる。