全て、零(ゼロ)になるわけではない。

時間は過ぎ去っても、

形あるものは壊れても、
愛する人と別れても、
想いは、決して消えることがない。

大切なものを失っても、
時は流れ去っても、
全て、零になるわけではない。

そのことに気がつくまで、
どれだけの痛みを伴うのだろう。
どれだけ、後悔するのだろう、
どれだけ、苦しむのだろう。

わたしは、数年前、
命を懸けて愛した人と別れた。
愛を手離した。
そう思っていた。
でも、忘れることは出来なかった。
それを未練だと思っていた。
だから、後悔したこともあった。

でも、全てを失ったわけではない。

そのことにようやく気がついた。

わたしは「力」を得たのだ。

愛する人のためなら、
その想いを守るためなら、
誰よりも激しく、誰よりも頑固になれる力。

そして人を愛するということを、
その想いを、
誰よりも熱く、誰よりも深く語ることができる、
言葉の力。

そして、それは「剛」の力である。

今のわたしに必要なのは、
もうひとつの力、
「柔」の力だ。

思い出と言えるほど、
まだまだ優しくはない。

だけど、あの頃のことを、
優しく、愛おしく語ることができるようになったら、
「柔」の力を手に入れることが出来るのだろうか。

今はまだわからない。