「人さまに迷惑をかけてはいけないよ」

「人さまに迷惑をかけてはいけないよ」
よく祖母が言っていた言葉である。

新型コロナウイルスの影響で、
働き方や外出が制限されている。
休業やテレワークのため、
自宅で待機している人も多いだろう。

なんとなく交通量は少ない。
日中にも関わらず、住宅地には車がある。
かといって、休日のようなざわめきもない。
みんな、息を潜めるようにして生活しているのだろうか。

実際、この歓迎できない休日に戸惑っている人も多いだろう。
家族と向き合うのも、自分と向き合うのも限度がある。

家に居て楽しいのは、
社会も自分も健全な時だけだ。
だからこそ、家に居るありがたみも増す。

でも、だからと言って、
自分勝手に出歩いてはいけない。
危険は少しでも避けなければいけない。
だって、もし自分がウイルス保有者だったら、
無症状だけど本当は陽性だったら、
「人さまに迷惑をかけてしまうから」

職場に感染させたら、職場に迷惑をかけてしまう。
自宅で感染させたら、近所に迷惑をかけてしまう。
ウチの子が感染させたら、学校に迷惑をかけてしまう。

「人さまに迷惑をかけてはいけないよ」

これはまるで呪詛のように、
わたしたちの心や体を萎縮させている気もする。

でも、この言葉の後に込められている想い、
それは、
「人さまに迷惑をかけてはいけないよ。
そうなると、もっと苦しむのは自分だから」

あるいは
「人さまに迷惑をかけてはいけないよ。
 一人ひとりがそう思えば、きっと好い社会になるよ」

こう続くのかもしれない。

だって、
今自分が我慢しないと、とんでもないことなるかもしれない。
今、自分が我慢すると、多くの人のが助かるかもしれない。

その瀬戸際にいるのだから、そっと息を潜めているしかない。

人がいるはずなのに、人気のない住宅街。
小さな公園の砂場に、遊びかけの玩具が散乱していた。
子どもたちがここで遊べる日を早く戻したい。