ときのまにまに 草稿② 今でもときどき観たくなる映画

「海の上のピアニスト」
(伊: La leggenda del pianista sull’oceano、英: The Legend of 1900)

アメリカへ渡る豪華客船の中で生まれ育ったピアニスト。
音楽の天才だったが、誰にも知られることなく、
船の中でその生を終えた。

彼は船から降りていきることを諦めた。
船の中しか知らない彼にとって、世界は彼にとって広すぎたのだ。

「ぼくは船からは降りられない。だから人生を降りるしかない。」
なんて憶病な弱い言葉だろう。
そして、潔い強い言葉だろう。

わたしは人生を降りられない。
だから、この広い世界で生きるしかない。
多くの中から
多くの人たちと出会い、別れ、
多くのものの中から、自分の道を選ぶ。

わたしの周りの世界は広がり続け、
知らないことも増えていく。
1つ道を選んでも、すぐにまた分かれ道。
その繰り返し。
いつだって迷い探し続けている。

舳先から舳先までと決まっている世界。
乗船者数と日数が決まっている人たち。
88の鍵盤を自在に操ることが出来るピアノ。

全てを理解し自由自在に生きられたら、どんなにラクだろう。
そこには未知への不安がないのだから。

でも、船の中には未来がない、希望もない。
新天地へ行くためには、船から降りないといけないのだ。
不安と戦いながら、希望を求めて進まないと、
未来へたどり着くことはできない。

でも彼は、それを知った上で、破壊される船とともに沈むことを選んだ。
選ぶことが出来ない彼が、ようやく最後に選んだ人生だった。
その潔いよい強さが、わたしには眩しかった。