ときのまにまに 番外編 ① 山が輝く日

朝から太陽が眩しい日はまだいい。
体内時計も調子よく動いて、何となく気分も上がる。

ウイルスの感染拡大の影響により、
今までに経験したことのない、
半ば強制的な自宅待機、外出自粛、

あんなに雑務に覆われていた1カ月前が嘘のようだ。

自宅待機が始まったころは、
思いがけない休暇のプレゼンだと喜んだ。

朝時間をゆっくりとすごしたり、
気が向いたら散歩に出かけたり、

でも、それが楽しめたのも、最初の数日だけだった。

テレビを付ければウイルスの話ばかり、
インターネットには白い言葉や空色の言葉が溢れている。

街からは活気も元気も消えている。

みんな、どこへ行ってしまったのだろう。

世の中がシンとしてしまってから1カ月近くが過ぎた。
自粛要請も、少しは緩んできた。

ようやく出勤が認められた。

鈍った体と頭をほぐしながら、仕事にとりかかった。
1カ月も離れていたのに、不思議と身体は覚えていた。

ただ、電話は鳴らない、客もこない。
取引先もほとんどが休業中だ。

街にも人が戻ってきているはずなのに、
活気や元気はない。

この街はこれからどうなっていくのだろう、
全く先が見えてこない。

風が大きく吹いた。
今日は天気も荒れているようだ。
密を避けるために開けていた窓が、
大きな音をたてて閉まった。

いつもは遠い山がすぐ近くに見えた。
風が雲や塵を吹き飛ばしたからだろう。
緑々とした木々までも見えた。

その一部に新緑色に輝いている場所があった。
まるで、そこにだけ何かが降りたったようだ。
そこにだけ、太陽が当っていたのだろう。

不思議な神々しさがある。

世界中を覆っているウイルスの霧も、いずれは晴れるだろう。
そうすれば、あの山のように明るい日も戻ってくるに違いない。