ときのまにまに番外編⑥続・ラマン(愛人) 

世の中を騒がしている、感染症も、
減ってきたようだ。
街にも少しずつ、人が戻ってきている。
外出自粛がようやく解除された週末、
ようやく、ショッピングモールも営業を開始した。

世の中少しずつ、平常に戻りつつある。
でも、彼はだけはまだ戻ってこない。

こちらから、電話はかけないルールだ。
でも、LINEを送るのもためらわれた。
なかなか既読にならないのが辛い。
既読になっても返事がこないのはもっとつらい。

報道番組は週末のショッピングモールの様子を伝えていた。
そろそろ季節も、夏へと変わりつつある。
せめて身につけるものは一新しようと、
何人かの女性が楽しそうにショッピングを楽しんでいた。

わたし一人だけ、取り残されているようだ。

多分、このままじゃいけない。
何とか気持ちを前に向けなければ、
今はまだ無理でも、それでもなんとかしなくちゃ、、、

職場の帰り道、
何かに誘われるように繁華街の方へと足を向けた。
ずっと休業していた飲食店にも、
灯りがついていた。

でも、人の数はまばらだった。
だから、偶然、でも、すぐに見つけてしまった。
一番会いたかった人を、
そして、一番見たくなかった姿を。

彼のそばにいたのは、
マスクをしている女性と、
小学5年生生ぐらいの女の子。

立ち尽くすわたしには気づきもしないで、
中華料理店と書かれた中へ入っていった。

これが現実、これが事実なのだ。
これまでの時間もこれまで時間も、

全て零に還る。

一体今までのわたしは何だったのだろう。

どこをどう歩いてきたのかわからない。
気付くと、自分のマンション側の公園にいた。
二度と彼がくることのない、
そう知ってしまった部屋に戻りたくはなかった。
彼にサヨナラを送ろうと思った。
でも、指が震えていた。
スマホが下に落ちた。
その瞬間、涙が溢れてきた。
声を押し殺すようにして泣いた。

どのくらいの時間、そこにいたのだろう。
「あの」
小さな声が聞こえた。
顔を上げると、小さな男の子が立っていた。
「これ落ちてたよ」
その小さな手にわたしのスマホがあった。
「ありがとう」
そう答えると、頷いて、母親のいる方に走っていった。
スマホにその子の温もりがあった。
それは愛人のわたしには、
まだ一度も感じたことのない温かさだった。

※このブログはフィクションです。