浴衣と花火
浴衣と花火
職場の帰り道、
まだ暗くなっていない夕暮れどき、
花火で楽しんでいる家族を見た。
親戚なのか、友人なのか、
数人の大人と一緒に、
まだ幼い女の子たちがいた。
どの子も、金魚のように浴衣を着ていた。
若いお父さんが、火を点けた。
別のお父さんは、寝そべって、
石で挟んだ仕掛け花火を撮影していた。
若いお母さんたちは、内輪を片手に、
遠巻きに花火を見ていた。
噴水のように火花が噴き出すたびに、
幼い彼女たちは歓声を上げていた。
白い煙と一緒に、
懐かしい火薬の匂いがした。
昨年の夏はあちこちで見られた風景。
家の近所でも、火薬の弾ける音が聞こえていた。
今年は暑さ以外に、夏らしいものはない。
だからだろうか。
何でもない風景に、どこか安堵を感じている。
来年の夏はどうだろう。
かつての姿を取り戻しているだろうか。
でも、どんなに世の中が変わっても、
そのときを楽しむ、その心だけは忘れないでいたい。