華宵(かしょう)の夜

仕事の帰り道、月を見た。
夜空にくっきりと輝くその姿を見ると、
秋を感じる。

これほど月がはっきり見えたということは、
その夜も近いということだ。

小学生の頃、母が天体望遠鏡を買ってくれた。
結構本格的なシロモノで、
とても子どもが扱えるモノではなかった。

でも、今日のような夜は、
ほろ酔いで上機嫌だった父が、
月に照準を合わせてくれた。

クレーターがはっきり見えたとき、
胸は躍った。

父がふざけて、
「今、ウサギが通ったぞ。」と言った。
わたしたちは信じなかったが、
まだ幼い妹は、
「見せて、見せて」と、
自分もぴょんぴょん跳ねながら言った。

新型ウイルスや気候変動など、
良くも悪くも、わたしたちの生活は変わってくる。
いろいろな影響で自然の姿も変わってしまうかもしれない。

でも、この月だけは、きっと変わらずにいてほしい。

昔から、人はは月を仰ぎ見るたび、
いろいろなことを想い巡らしてきたのだから。
そしてそれは今もそうに違いないのだから。

華宵とは、月が美しい華やかな宵をいう。