ワタシ、ココニイテモ、イイデスカ。
ワタシ、ココニイテモ、イイデスカ。
いつもいつも、心の中にあった不安、
ずっとずっと、感じていた、異質な自分。
その不安が、言葉になった日から、
彼女は眠れない日々が続いていた。
子どもの頃も、友だちの話題についていけなかったり、
一人だけ、みんなと違う意見を持っていたり、
でも、必死でそれを隠そうとしていた。
だって、ここに居たいから。
ここしか、いる場所がないから。
違うってことがバレたら、
ここから弾き出されてしまう。
でも、異質でも、何かの役に立つのなら、
もしかしたら、ここにいることを認めてもらえるかも。
認めてもらう?
誰に?
ここにいる人たちに。
家族に、
そう、職場の人たちに。
どうして、そんなことを考える?
だって、家族はしょうがなくわたしをおいてくれてるのかもしれないよ。
血が繋がっているから、
本当は要らないって思っていても、
虐待とかって罪になるから、
それが嫌だから、追い出せないのかもしれない。
勤め先だってそう。
本当は、もっと優秀な人を雇いたいのに、
理由のないリストラとして、問題視されるかもしれない。
だから、いさせてくれてるのだと思う。
だとしたら、みんなの邪魔にならないように、
目障りにならないように、
異質だとバレないように、
明るく、朗らかに、笑顔を演じて演じて、演じて。
でも、
朝起きたら、家には誰もいなくて。
みんな、何も言わずにどこかへ行っているかもしれない。
わたしがいない方がいいと判断したのに、
みんなを探しになんていけない。
朝、事務所にわたしの机がなくても、
みんなのために、わたしがいない方がいいと、
思われたのなら、それ以上はいられない。
それでも明るく、朗らかに、笑顔でなんていられない。
でも、本当はここにいたい。
ここにいていいよと、言ってほしい。
ここがあなたの場所なんだよ、と認めてほしい。
いつも心にあるこの言葉、
「ワタシ、ココニイテモ、イイデスカ。」
聞きたくても聞けない質問。
聞きたいけど、聞きたくない、その答え。
この不安が消えることはあるのだろうか。
いつか、安心して自分の場所だと思える日が来るのだろうか。
そして、数日後、彼女は姿を消した。
「ワタシ、ココ二ハ、イラレナイ。」
それだけ書いた紙を残して。
彼女の家族も、職場の人たちも、友人たちも、
何があったのか、知らないと答えた。
ー終わりー